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遊びはなぜ学習になる?脳科学でわかる「遊び=学び」の仕組み

積み木を背景に「なぜ遊びは学びになる?」と書かれたアイキャッチ画像

「子どもは遊びの中で学ぶ」という言葉は、教育や育児に関する話題で頻繁に使われます。
一方で、この言葉をどこか曖昧なスローガンのように感じている人も多いのではないでしょうか。

勉強といえば、机に向かい、文字や数字と向き合う大変なもの。
勉強に対してそんなイメージをもち、遊びは勉強とは対極にある「時間が余ったらやるもの」「気分転換のためのもの」「楽しいもの」と考える方も多いと思います。
そのため、「遊びが学習になる」と言われても、実感が伴わないのはごく自然なことでしょう。

しかし近年、脳科学や神経科学の研究が進むにつれ、
遊びと学習の関係は、感覚論ではなく脳の働きとして説明できる現象であることが明らかになってきました。

この記事では、なぜ遊びが学習につながるのかを、
脳の仕組みという視点から、できるだけ日常感覚に近い言葉で整理していきます。


目次

遊びと学習は、本当に正反対なのか?

私たちは無意識のうちに、「学習=努力」「遊び=楽をすること」という構図で物事を捉えがちです。
しかし、脳にとって重要なのは、その行動が努力か娯楽かではありません。

脳が見ているのは、
その経験が自分にとって意味のあるものかどうか
この一点です。

脳は情報をすべて同じように扱っていない

脳には、日々膨大な情報が流れ込んできます。
そのすべてを真面目に処理していたら、すぐにエネルギー切れを起こしてしまいます。

そのため脳は、

  • 重要そうな情報
  • 繰り返し現れる情報
  • 感情を伴う情報

を優先的に処理し、記憶に残そうとします。
みなさんも「一生懸命勉強したのに内容が頭に入りきらない…」という経験があるのではないでしょうか。これは脳がエネルギー切れを起こさないように必要でないと情報を排除しているから生じるのです。

ここで重要になるのが「感情」です。
特に「楽しい」「面白い」と感じているとき、脳内ではドーパミンという神経伝達物質が分泌されます。

ドーパミンは快感に関わる物質として知られていますが、
それだけでなく、学習への動機づけや記憶の固定化にも深く関わっています。

好きこそものの上手なれ(人は好きなことには熱心に取り組むので上達が早いということ)」ということわざが江戸時代からありますが、
これは好きなことに取り組むと感情が動かされてドーパミンが分泌され、結果として覚えるのも早いということを示しているのだと思います。

つまり、遊びの最中に感じる楽しさは、
脳にとって「これは価値のある経験だ」というサインになっている
のです。


遊びが学びに変わる脳内プロセス

では、遊びはどのような流れで学習へと変わっていくのでしょうか。
ここでは、脳の働きに注目しながら整理してみます。


試行錯誤が前提になっている

遊びの大きな特徴は、「うまくいかなくても問題にならない」ことです。

積み木が崩れても、パズルが完成しなくても、
「失敗したからダメ」という評価は基本的にありません。

そのため、
「こうしてみたらどうだろう」「次は別のやり方を試してみよう」
という思考が自然に生まれます。

このとき脳では、
仮説を立て行動し、結果を確認し、修正する
という問題解決の基本サイクルが回っています。

このサイクルを担っているのが、思考や判断を司る脳の領域「前頭前野」です。
遊びは、この前頭前野を意識的に鍛えなくても、使わざるを得ない状況を作り出します。


体験を通した学習は、記憶に残りやすい

遊びは、頭の中だけで完結しません。
視覚、触覚、聴覚など、複数の感覚が同時に使われます。

例えばブロック遊びでは、
色や形を見て、重さや感触を確かめ、崩れる音を聞きます。
このような体験は、脳内で複数の神経回路を同時に刺激します。

神経科学の分野では、
複数の感覚を伴う経験ほど、記憶が強く定着しやすいことが知られています。

文字だけで覚えた知識よりも、
体を動かしながら得た経験の方が忘れにくいのはこのためです。


主体性が「意味のある記憶」を作る

遊びの中では、「やらされている」という感覚がほとんどありません。
自分で選び、自分で試し、その結果を自分で引き受けます。

この「自分でやった」という感覚は、学習において非常に重要です。
脳は、自分に直接関係のある出来事ほど、優先的に記憶しようとします。

記憶形成に関わる海馬も、
感情や主体性を伴った経験のときに、より活発に働くことが分かっています。

楽しかった遊びの記憶が、
大人になっても意外なほど鮮明に残っているのは、偶然ではありません。


なぜ「やらされる勉強」は続きにくいのか

ここまで読むと、「では勉強は意味がないのか」と思うかもしれません。
もちろん、勉強そのものが悪いわけではありません。

ただし、「やらされている」という感覚が強い学習は、
脳にとってあまり良い状態ではない
ことも事実です。

強いストレスを感じると、脳内ではコルチゾールというホルモンが分泌されます。
コルチゾールは、集中力や記憶形成を妨げる方向に働くことが知られています。

努力しているのに身につきにくい、
すぐに忘れてしまう、
といった状況は、能力不足ではなく、脳の状態の問題である場合も少なくありません。


知育玩具や「遊びながら学ぶ」が評価される理由

近年、知育玩具や遊びを取り入れた学習法が注目されているのは、
決して流行やマーケティングだけの話ではありません。

楽しいから続きやすく、
自分で考える余地があり、
失敗がそのまま学びに変わる。

こうした特徴は、脳の働きと非常によく一致しています。

楽しいという感情が伴うからこそ自分自身で仮説を立て、行動し、結果を確認し、修正する、
という問題解決の基本サイクルが継続して回るのです。

重要なのは、「どれだけ高度な内容を教えるか」よりも、
脳が学びやすい状態をどう作るかなのかもしれません。


遊びは学習の「近道」ではなく「本体」

遊びは、勉強の前段階でも、単なる息抜きでもありません。
脳科学の視点から見ると、遊びそのものが学習の中核を担っていると言えます。

楽しさが脳を動かし、
試行錯誤が思考を育て、
体験が記憶を深める。

この仕組みを理解すると、「遊び=学び」という言葉は、
理想論ではなく、非常に現実的な表現であることが分かります。


まとめ:遊びを「無駄」と切り捨てないために

遊びは、何も生み出さない時間ではありません。
脳の中では、思考・感情・記憶が同時に動き、学習が進んでいます。

「遊んでばかりで大丈夫なのか」と不安になることもあるかもしれません。
しかし、脳の仕組みを知ると、
遊びは決して学習の敵ではなく、むしろ学習を支える重要な土台であることが見えてきます。

次の記事では、こうした考え方を踏まえながら、
具体的な遊びや知育玩具が、脳にどのような影響を与えるのかを、さらに掘り下げていく予定です。


参考

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